マーダーミステリー

前半の推理導線

「誰が一族の者ではないか」と問われれば、「全員が一族の者ではない」ととれる前半戦だが、各人のハンドアウトに自身のこととして「(直近の)入れ替わりは除外される」ことが分かるようになっている。

気付きのポイントは

・伝書バード
・ソドラとアグリカの国境近くにある手紙
・ジラからタイガへ返信の催促

の3つ。
伝書バードは、宛先(人物)のDNAを探知して手紙を届ける魔具。王族やその側近しか使うことはないともある。ソドラとアグリカの国境にあった手紙の傍らには、伝書バードがいたため、手紙は何者かが伝書バードを用いて送ったものであろう。

一方で、同じく国境近くの山村でタイガは大猪を退治している。タイガが手紙の返信を催促されているという情報から、

「山村でタイガに何かがあったのではないか?」
「手紙の傍には土も盛られており、何かが埋められているのではないだろうか?」
「伝書バードはジラがタイガに宛てたもので、埋葬されたタイガを探知したのではないだろうか?」

という気付きがあれば、手紙の内容から、送り主のジラが「一族ではない者」と推測ができるだろう。

後半の推理導線

王はどのようにして死んだのだろうか?

最初の情報では「心臓をナイフで刺されている」となっているが、出てくる情報に「ナイフの刺し傷の先に心臓がない」という情報がある。

周囲には血痕もなく、出てくる2本のナイフにも血は付着していなかった。2本のナイフのうち、1本は実際にロウティスが王に突き立てているので、ロウティス目線では血痕が無いことに疑問が湧くだろう。

一方で、王の間には残留している魔力があり、何者かが魔法を使った可能性が高い。

ここで、前半に出てくる「不老不死の探究」という書籍の情報を参照して欲しい。そこには「心封印の秘術」について記されており、その内容は「心臓を取り出して別の場所に封印することで限りなく不死に近づく」というものだ。王の体には心臓がない。この秘術を施された可能性が高い。

しかし、王は死んでいる。秘術で心臓が無いにも関わらずなぜ死んでしまったのか?

読み返せば、「不老不死の探究」にはこうも書かれている「(取り出した心臓を)被術者の大切にしている物品に封印する」と。

フェニク王が大切にしていた物品とは?心臓は何に封印されていたのだろうか?

何人かのハンドアウトには、フェニク王が王妃を愛し、「肖像画」を大切にしていたような記述がある。そして何より、ジラが持っていた「肖像画の額縁の燃え残り」には魔力が残留していた。そう、燃えた肖像画はフェニク王が大切にしていた物であり、そこに心臓は封印されていた。肖像画が燃えてしまったことで、封印されていた心臓も燃え落ち、フェニク王は死んだのだ。

あとは、フォルガンティの言う通り。

肖像画の周囲には火元がなく、燃え残った額縁の残留魔力から、燃やす行為そのものも魔術によるものと推測される。

タトルは偽物。魔力は使えない。
事件が起こった時刻、フォルガンティは外出していて不在であり、魔力を持つ者の入城を著しく制限しているオルマテ城内に於いて、他に魔力を持つ者はバンクしかいないのだ。

どうだろうか?
真相に辿り着いただろうか?

ジラ(リーン)は何者か

前半の答えとして「ジラ(リーン)は一族ではない」となっているが、後半になると「ジラ以外はフェニクとDNAが一致しない」という情報が出てくる。

一体ジラ(リーン)は何者なのか?

ジラとリーンは、フェニクとニタの子として生まれたが、双子であったため家督の序列がつけにくく家中に混乱をもたらす「忌み子」とされる。
執事のキリフは、産まれた子が双子であることを隠し、ニタ王妃には「死産であった」と報告した。そのうえで、双子を城下に逃がしたが、一人(リーン)は一般の夫婦に拾われ、もう一人(ジラ)は数奇なことにオルマテ城の侍女が拾ってしまい、子を失って傷心のニタ王妃が引き取ることとなった。

考えてみれば、ニタは夫であるフェニクに死産であることが告げられずに困っていたため、この点においても都合がよい。

こうして、王の子にも関わらず、捨て子としてニタに拾われたジラは、ニタの認識としては「一族ではない者」であるが、フェニクとDNAが一致する前半では唯一の血縁者という皮肉な立場に立たされているのである。

ちなみに、日本でも双子を忌み子として扱っていた時代があり、かの徳川家康の次男である「結城秀康」は、双子であったと伝えられている。結城秀康は徳川家康に冷遇されていたため(次男にも関わらず2度も養子に出され、家督は三男の家忠が次ぐ)忌み子が影響しているという俗説もある。

遊んでいただきありがとうございました。
買ってくれた方、遊んでくれた方、
そして、全てのプレイヤーに最大限の感謝を。

かわぐちまさし

かわぐちまさし 作品等

■制作■
(トータルデザイン)

六花が空を覆うとき
消えたパンツと空飛ぶサカナ
ロナエナ ~厄災のギフト~
零に誠
六花と灰色の夢見草
六花と日輪草のベーカリー
ペーパーヒーローズ -復活編-
新感覚恋愛×マーダーミステリー劇『Love Letter for You』
不可逆過程のデジャブ
インビジブル・メモリー
王と、王たる者と、王ならざる者

 

■総合演出■
(編集/シナリオ加筆/システム構築 等)

水面下の殺意
純白の悪意 Rebooted
漆黒の鎌鼬
加速する闇

 

■校正・編集■

業火館殺人事件
凍てついた思念
約束の場所へ

 

■監修■

放課後さいころ倶楽部
 ※マーダーミステリーテーマ回監修(87~90話)

名探偵は君だ~怪奇都市伝説殺人事件~
※トリック監修

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