そして、一番古い1982年版を開けると、もっと驚くべきものが。
カセットはない。その代わり、黒くて薄っぺらい、これは……
何と「ソノシート」(薄いプラスティックのレコード盤)!
興味津々でゲームを解読してみた。2つの版はほぼ同一。設定は、『コーヒーハウス・マーダー』よりもう少し本格的。マサチューセッツ州の小さい町の実業家ロジャー・エリントンには後ろぐらいところがある。彼が町のレストラン‘エスカルゴ’で、やはり問題ありそうな男やレストランの店主と食事中に毒殺された。南米の猛毒クラーレが混入されていたのだ。
近くにいたのは、レストランの給仕係に店を取り仕切っている女性マネージャー。他にはロジャーの愛人や売れないコーラスガール、ヨーロッパから帰ってきた復員軍人、そしてミステリーではお決まりのロジャーのぐうたらな義理の甥。
彼らもそれぞれに秘密を持っており、今回の事件の犯人とは別にそれらが絡み合う。この辺りは最近のマーダーミステリーと似ているといってよいだろう。
ただ、ゲームシステムは大雑把。それぞれの人物には、さっきの設定の他に、手がかりが3つずつ付いている。これらを1ステージずつ会話しながら全員が露わにしていき、3ステージが終わったところで、真犯人は誰でしょうを推定する。投票などはない。
個別の設定はあっても、それを暴けたか、防いだかの得点はなく、全体が真犯人特定のための協力ゲームにすっきりなっている。途中に出て来るレッドヘリング(ニセ手がかり)に振り回されながら、最後に‘ああ、そうだったのか’を楽しむタイプと言えるだろう。
なら、仰々しく付属していたソノシートやカセットテープは何なのか。実際に聞いてみた。
前提の殺人まではすでに説明されている。テープでは、ここに警察がやってきて、それらしい現場検証をしながら、全員に事情を聞いたりしている。そしてラチが開かないので、期日までに犯人は自首するか、おまえたちで探し出せ、でないとろくなことにならんぞという警察にあるまじきセリフでゲームスタート!(笑)
それらしい雰囲気を盛り上げるための寸劇ということだった。まあ、こうしたフレーバーはマーダーミステリーには必要だろう。