2020年12月25日
イマーシブクラウド
新作マーダーミステリー大賞・大賞受賞
まず初めに、皆さん。
メリー・クリスマス!
12/1から12/25まで毎日マーダーミステリーに関する記事が更新されるという今回の企画「マーダーミステリー アドベントカレンダー」もいよいよ最終日!クリスマス当日となりました。
僭越ながらトリを飾ることになりました、アーキテクトといいます。
……とはいえ、この記事を読む方の大半が抱く正直な感想は以下の一語に尽きるでしょう。ええ、ええ、わかっていますとも。
それではご唱和ください、この言葉を!
「アーキテクトって誰?」
マーダーミステリー界隈を飾る綺羅星の如きスタアの方々の中でただ一人、完全に無名と言っていい人物は誰でしょう?
そう、私です。
今回の「マーダーミステリー アドベントカレンダー」の企画に参加するに至る経緯として、主催のかわぐちまさし様からお誘いをいただいたとき、最初に考えたことは
「私でいいんでしょうか?」
であり、続いて考えたことは
「やったぁ!」
でした。
閑話休題。
というわけで自己紹介させていただきます。
皆さんはじめまして!
VRマーダーミステリー団体「イマーシブクラウド」でシナリオ製作を担当しているアーキテクトという者です。
「イマーシブクラウド」では現在、PC用ソーシャルVRアプリ「VRChat」上にてVR空間におけるマーダーミステリーの公演を開催している、2020年12月現在のところ唯一の団体です。
現在は私がシナリオ部分を担当させていただいた「プロジェクト・アーキテクト」と「令和探偵奇譚アガスティア・レコード」の二作品を公演している他、所属シナリオライターである創手カケラさん、此花サクラさん、出水洸太郎さんによるVR専用のオリジナルマーダーミステリーシナリオ、そがべさん製作のオンラインマーダーミステリーシナリオ「夕景」のVRアプリ版など多数のシナリオを公演しています。
さらに!
つい最近、新たな試みとしてVR上での初の有償公演が開始されました。
有償公演第一作目はマーダーミステリーファンにも名高いでしょう、ぺよん潤さん製作によるVR専用オリジナルシナリオ「魔術高専のふしぎな事件簿~入学式の悪夢~」です。
ご興味のある方は是非参加してみてください。
また私個人の話としては、先日発表されました第一回新作マーダーミステリー大賞・パッケージ部門を受賞させていただきました。
受賞作「羅生門☆プリンシプル」は改題・調整を加えた上で来年よりグループSNE様から発売予定です。自信作ですので、こちらも遊んでいただけたら幸いです。
さて。
そういった経緯もありまして、今回の企画参加者の中で私は唯一のオンラインマーダーミステリー界隈に属する人物ということになります。そこで、今回の記事の主題として「オンラインマーダーミステリーのメリット」を挙げることにしました。
まず記事の結論を挙げさせていただきます。
オンラインマーダーミステリーは面白いですよ!
えー、本当に?
そんな声が聞こえてきそうです。
ですが断言します。
面白いですよ。
でも実際遊んでみたけどそんなに面白くなかったよ?
そう感じるのも間違っていません。
正解はひとつ!
じゃないんです。
今年の2月から5月頃にかけて、新型コロナウィルスの蔓延によってにわかにオンラインマーダーミステリーが盛り上がった時期があったのを覚えている方も多いと思われます。
これまで専門店による店舗公演やパッケージシナリオをオフラインで遊んでいた方々が、ステイホームの中でもマーダーミステリーを遊びたい!そんな思いを抱えてオンラインの世界の門戸を叩きました。
しかし、その思いは必ずとも果たされたわけではなかったと推測できます。
事実、私もオフラインでマーダーミステリーを遊ぶ方にオンラインマーダーミステリーの感想を聞くと「やっぱりマーダーミステリーはオフラインの方が面白いね」と聞こえてくることが多いです。
しかし、オンラインのマーダーミステリーにはいくつものメリットがあるのです。
拙い文章とはなりますが、その魅力の一端を解説させていただきましょう。
以下はオンラインマーダーミステリーが持つメリットの一部です。
・全体に公開された情報の把握が容易である。
・ロールプレイがしやすい。
・オンライン特有のギミックを使用できる。
・密談に対する心理的抵抗が少ない。
はい。ちょっと考えただけでもこれだけありますね。
ちなみにこれを読んでる方の中にはオンラインである最大のメリットは地域や場所を選ばず公演を行えることだろう、と考えている方もいると思います。
しかしそれはゲームそのものに関するメリットではなくゲームをプレイする段階での話になりますので割愛させていただきます。大抵の方はそれが最大のメリットであることくらい、わざわざこの記事を読まずともわかる筈ですし。
というより、なまじそのメリットのせいで
「オンラインマーダーミステリーは地域や場所を選ばずにプレイすることができるが、その体験の質はオフラインの公演に劣る」
という誤った前提が意識にある方が多い気がします。
そのようなプレイ段階におけるメリットをもって擁護をするまでもなく、プレイそのものの質においてもオフラインの公演に匹敵する体験は与えることができる……筈です。
それでは一つずつ見ていきましょう。
オフラインの店舗公演などで、皆さんこんな経験はありませんか?
「ゲーム終盤で大量の情報カードが公開されているけど、枚数は多いし、対面のテーブルまでいってわざわざ見せてもらいながら議論もして、メモもしなきゃいけなくて、全然情報が整理できないよ~!」
ありがちですね。
オンラインでしたらその悩みは簡単に解決します。
「ユドナリウム」や「ココフォリア」などのオンラインセッションツールを使用するシナリオを製作するだけで、はい、クリック一つで誰の所持品のカードであろうと何度でも見に行くことができます。
常に見ることができるのでメモいらずですね。全体を俯瞰することも容易です。
オフラインの公演で推理重視とされるシナリオのうち、大量に情報が溢れるタイプのシナリオの場合ならオンラインで製作した方がプレイヤーに推理に集中してもらえることもあるわけです。
オンラインでは相手の顔は見えません。
相手の顔が見えないことはオンラインの欠点として挙げられることも多いですが、ある欠点はそのまま利点にもなりえます。
顔が見えないので、リアルの自分とまったく違うキャラクターであっても演じやすいのです。
自分と異なる性別のキャラクターだったり……あるいはキャラクター紹介に「ひたすらに顔が良い。磁器人形(ビスクドール)のような整った顔立ちと色素の薄い肌と髪」なんて書いてあるキャラ、なかなか演じるのは抵抗がありますよねぇ……?
でもオンラインなら大丈夫!
だって顔が見えないんですから。
オフラインの公演でロールプレイ重視とされるシナリオのうち、キャラクターが濃いタイプのシナリオの場合ならオンラインで製作した方がのびのびとプレイヤーに演技を楽しんでもらえることもあるわけです。
オフラインの公演でオフラインならではのギミックがあるように、オンラインならではのギミックを仕込む余地はいくらでもあります。
こちらについてはシナリオ製作に関するデザイン領域の話になるので、詳細を書いてしまうとアイディアの無償配布になってしまうので詳しくは言えませんが。
ただ一例を挙げるなら、「全体議論が存在せず密談のみしか存在しない」というタイプのシナリオの場合は(私はオフライン・オンライン双方でこのギミックを利用したシナリオをプレイしたことはあります)オンラインの方が自然に遊べると思いますよ。
その理由については次項にて。
いわゆる「密談」というシステムは様々なマーダーミステリーにて用いられている、基本的なルールといっても過言ではありません。
ですが、オフラインで遊ぶときはやりづらいときありませんか?
「部屋が狭いから、よその密談の声が聞こえてくる……」
discordのような通話アプリを使用してチャンネルを分ければ、一切声は漏れませんよ!
「ソーシャルディスタンスを守りたいけど、近づかなきゃいけない……」
オンラインです!
「色んなとこに密談しに行きたいけど、呼びかけるのが面倒だなあ……」
テキストチャンネルで呼びかけをすれば、抵抗なく密談中の人にも呼びかけられますよ!
いやぁ、オンラインだとやりやすいですね。万々歳です。
はい。
ここまでオンラインマーダーミステリーの良いところばかり挙げましたが、実際のところオンラインの公演にはオフラインの公演と比較してデメリットと言わざるを得ない点もいっぱいあります。
ですがこの記事の主題は「オンラインマーダーミステリーのメリット」ですので、デメリットは無視させていただきます。長くなりますし。
重要なのは、オンラインとオフライン双方の利点と欠点を正確に理解している人が少ないという点なのです。
現状、オンラインマーダーミステリーの界隈とオフラインマーダーミステリー界隈という二つの世界はある種の断絶状態にあると私は考えています。
この記事を書くために自分のこれまでのマーダーミステリープレイ歴を確認したところ、オフライン公演とオンライン公演でちょうど1:2でした。
理想を言えば1:1なのですが、まあまあ良いアベレージではないでしょうか?
二つのものを比較して利点と欠点を語るためには、双方を知っている必要があります。
記事の冒頭で書いた通り、正解は一つではありません。
現状リリースされているオンラインのマーダーミステリーが、オンラインの利点を充分に把握し、それを体現するように製作できているかと問われれば残念ながら難しいところです。
これはオンラインとオフラインの市場の違いに由来していると思われます。
日本においてまだ1年ちょっとしか歴史がないオフラインマーダーミステリーですでにある種の『定石』が構築されつつあるのは、「王府百年」を始めとして一早く日本における中国式のマーダーミステリーの店舗公演を開催したディアシュピールのような商業公演を生業とする各マーダーミステリー専門店様や、パッケージシナリオを出版されている各メーカー様による企業努力によるものでしょう。
対して、現状のオンラインマーダーミステリーは(オフラインからオンラインにコンバートされた一部の専門店のシナリオや、有償オンライン公演を開催している一部店舗のような例外を除き)主にBoothなどで販売されている個人製作のインディーズマーダーミステリーが中心となっています。
こちらは試行できるテストプレイの回数や製作にかけることができるコストなど、そもそものゲーム製作に注力できるマンパワーがオフラインと比較して小さくなりがちです。
しかし、これはオンラインマーダーミステリーが媒体としてオフラインマーダーミステリーに劣っているということを意味しません。
このことはオンラインマーダーミステリーのメリットの項で示した通りです。
重要なことは、優劣ではなく差異を理解すること。
そして、個人ではなく文化を成長させることです。
亀の歩みの如き日進月歩であろうとも、いつの日か雨垂れ石を穿つとあります。
このような偉そうな記事を書かせていただきましたが、正直私自身も全然体現はできていないのでこれから頑張ります。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。
結論として言いたいことをもう一度言わせていただきますと、
オンラインマーダーミステリーは面白いですよ!
あと、
オフラインマーダーミステリーも面白いですよ!!
というか、
マーダーミステリーって面白いゲームですね!!!
以上です。
それではまた、殺人現場で会いましょう。
Fin.